当たり前の話である。世の中にビス1本を見て、これは小さい、つまらん物だから値段はかかっていないと考える人は誰もいない。ところが、ところがである。現場にちらばっている釘については、世の中の誰からも指摘されているように、建設業の原価無視の見本にされている。釘一本は、ほとんどアルミの一円玉と同じくらいのものである。今どき、一円玉一枚を拾う人は少ないかもしれないが、さりとてちらばっている一円玉の上を平気で踏みつけて歩く人もいないだろう。
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しかし、工事現場ではこのようなことが行われている。ある会社へ診断にいったとき、一〇くらいの現場の支出伝票(支払い伝票あるいはそれに対応する納品書)を見てびっくりしたことがある。一〇の現場のうち八現場までが、まず乗込み時の納品伝票に、決まって「墨壷」の購入から始まっているのである。いったい、墨壷や下げ振りというものは、一現場ごとに購入する必要があるものだろうか。もちろん、必要ない。大切に使えば、大工さんの一生物である。それがなんと、ほとんどの現場で、そのつど新品が購入されているのである。似たような例は、いくらでもあるはず。たとえば、現場の変わるたびにソロバンや電卓の購入が必要になったり、レベルが足りなくなったり、労働者の数よりはるかに多いスコップが消耗されたり……ということは、まだまだザラである。建設業は他の製造業等にくらべれば、このような細かい点の追求ではたいへん遅れていることを反省しなければならないだろう。これらの追求の必要性については誰しも異存がないものの、現実には現場が散在し、管理が現場ごとに個別的であるために、具体的な管理の内容にまで目がゆきとどいていない場合が多いようである。現場を預かる一人ひとりが、細かい用品ひとつに至るまで、いくらかかるかを知り、どうしたら安くできるかを考え、工夫すべきであろう。